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梅田みか オフィシャルサイト
Essay エッセイ
あなたとしかできない話をしよう
誰かと話していて、こんなこと、ぜんぜん話したくないのに、と思うことがある。
せっかくこの人と会っているのに、どうしてこんな当たり障りない話をしているのだろうと、時間が惜しいようなとき。とても大切な人といるのに、何かの拍子に入り込んだ他愛ない話題から抜け出せず、そのまわりをうろうろしているとき。会っていなかった期間を埋めるために長い挨拶や前置きが必要で、なかなか本題に入れないとき。お互いにどうでもいい話だと気づきながら、沈黙を埋めなくてはならないとき。
誰とでも話せるようなことを、大切な人と話すのはもったいない。誰彼かまわず同じ話をして歩くのも性に合わない。目の前にいる、その人としかできない話をいつもしていたい。そうでなければ、誰かに会う意味さえないのではないかと思う。
特別な話題はいらない。たとえそれが今日の天気の話でも、くだらないゴシップでも、くりかえし聞かされてもう事実などどうでもよくなってしまった使い古された逸話でも、その人と話せばキラリと光る大事な会話になることもある。
逆にどんなに興味深い話も、相手によってまったく無意味な情報になる。どんなに面白いシーンを切り取ったエピソードも、ありふれた噂話になる。気の利いた批評はただの悪口に、うれしい報告は自慢話に、いつのまにかすりかえられる。
何を話すかも大事だが、誰と話すかはもっと大事。どんな魅力的な旅先も、誰と行くかによってすっかり意味を変えるように、その会話がどこに連れて行ってくれるかは相手次第。
あなたとは、あなたとしかできない話がしたい。
Photo by MUKAI MUNETOSHI
Tags:
あなた, 大切な人, 話
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