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梅田みか オフィシャルサイト
Essay エッセイ
あの人は変わってしまった
「変わらない」ことが希少価値になるのは、いったい何歳からだろう。
子供のころは、昨日より今日、今日より明日と、できることが増えていく。
何も変わらない日なんて、一日もない。ひと月もしたら別人みたいに変わっている。
大人になっても、まだ若いころは、どんどん変化していくことに価値がある。
「大人になったね」「きれいになったね」「仕事ができるようになったね」
見た目はそんなに変わらなくても、内面はぐんぐん成長していく。あるいは堕落していく。いろいろなことを経験し、学び、卒業していく。
でもいつからか、「変わらないね」というのが最高の褒め言葉になる。
ある程度の年齢を重ねた人が「変わらない」ことはとてもむずかしいことだから。
容姿や健康の状態、仕事に対する志や生きる姿勢、生活習慣や恋の仕方、いいところも悪いところも、変わらないでいるのは至難の業だ。
ただ同じ生活を続けるのでは、変わらないことにはならない。ただ若々しければいいというのでもない。ほんの少しずつでも向上していかないと、あちこちから飛んでくる下向きの矢印に抗えない。
毎日毎日、ほんの少しずつ、人は変わっていく。ほんの少しだからと見過ごしていると、気がついたときにはもう、自分自身から遠く遠く離れている。そんなこともある。
「あの人は変わってしまった」と思うときは、自分も変わってしまっている。
Photo by MUKAI MUNETOSHI
Tags:
変わらない
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