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梅田みか オフィシャルサイト
Essay エッセイ
いつかふたりで行きたいね

どこかへ出かけて美しい場所に立ったとき、今あの人が隣にいたら、目の前の景色はもっと輝きだすんじゃないかと想像する。そんなとき、わたしはあの人を好きなのだと思う。
いい映画を観たら、ああ、あの人と観たかったと時間を巻き戻したくなり、面白い本を読んだらあの人に貸してあげたくなる。なんでもない料理がとびきりおいしくできたら、あの人に食べてもらいたいと願う。そんなとき、わたしはあの人を好きなのだと思う。
うれしいことがあったとき、いちばん最初にあの人に伝えたい。悲しいことがあったとき、誰かに頼りたくなったとき、真っ先にあの人の顔が浮かぶ。心がちぎれそうな夜、あの人にそばにいてほしい。そんなとき、わたしはあの人を好きなのだと思う。
だから好きな人に、「いつかふたりで行きたいね」と言われたら、それはそれはうれしいことだ。連れて行きたいところがあるんだ。きみに見せたいものがある。聴かせたい音楽を集めたよ。今度きみに食べさせたいなあ。いちばん最初にきみに言おうと思って。もしきみがここにいたらどんなに喜ぶだろうと思ったら、会いたくなったよ。
これらはみんな、愛の告白に限りなく似ている。だから好きでない人に言われると、少し困る。
Photo by MUKAI MUNETOSHI
Tags:
告白, 映画, 景色, 隣, 音楽
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