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Essay エッセイ
クリスマス・メモリー
師走に入るのを待ちかねて、いっせいにきらきらと輝きだす街並みが好きだった。ああ、今年もクリスマスがやってきた。その近づいてくる足音を一歩ずつ確かめるように、アドベントカレンダーの窓をひとつずつ開けていくように、年に一度の聖夜をわくわくと待つ。十二月は、ほかの月とは違う特別な月だった。
けれど、クリスマスがはじまるのは年々早くなって、今はもう、十一月もイルミネーションを楽しむ季節になってしまった。気候も気まぐれで、夏を十月まで引きずったり、秋を忘れて北風を吹かせたりするから、もうわけがわからない。だんだんと華やいで、ちゃんと寒くて、賑やかで、それでいてちょっと厳かな、わたしの好きだったあの十二月はどこへ行ってしまったのか。
クリスマスの思い出をつなぎ合わせていると、ところどころ記憶のピースが抜け落ちてしまっている。あの年のクリスマス、わたしはどこで誰といたのだろう? あの夜、わたしの心をあたたかくしたのはどんな言葉だっただろう? 思わずわあっと声を上げるほど嬉しい贈り物はなんだっただろう? あの時見上げた夜空には、星がまたたいていただろうか。それとも白い粉雪が舞っていただろうか。
わたしはほどけてしまった糸を、そろそろと巻き戻し、丁寧に縫い直す。そうすると、パッチワークキルトの完成図のように、今のわたしが浮かび上がる。そうそう、わたしはこうしてここまで歩いて来たのだ。楽しいクリスマスも、せつないクリスマスも、はしゃいだクリスマスも、忙しいクリスマスも、幸せなクリスマスも、涙のクリスマスも、同じように大切で、同じように愛しい、どれも欠けてはいけないわたしのピース。
わたしも、誰かのクリスマスの思い出の、端っこにいるだろうか。
Photo by MUKAI MUNETOSHI
Tags:
アドベントカレンダー, イルミネーション, クリスマスリース, 思い出, 聖夜