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梅田みか オフィシャルサイト
Essay エッセイ
会えない時間
会いたい人に会えないのはさびしい。でも、会いたい人がいないのと、どちらがさびしいのだろうか。
とても会いたい人と、会えなくなってしまった。毎日のように会っていたときは、会えることが当たり前だと思っていた。会えなくなって、会えることは当たり前じゃないんだと気づいた。
会えないわけを、たくさん考えた。自分のせいや、相手のせいや、誰かや何かのせいにしようとした。どうにかして会おうと、いくつか勇気も出してみた。でも、そこには理由も責任も手段もなくて、ただ会えない時間が広がっているだけだった。
会えない時間は、いろいろなことを教えてくれる。誰かに会いたいと思うのは、その人から何かをもらいたいと思っているからだ。
わたしはその人から、楽しくて素敵な、わくわくした気持ちをもらっていた。その人といると、いつもより華やいだ自分でいられた。疲れることも苛立つこともあったのに、その人といるときの自分が好きだった。でも、その人はどうだったのだろう? わたしは、何も与えることができなかったのか。
誰かに会いたいと思い続けることは、少し苦しい。胸の中に、その人の場所をずっと抱えているということだから。でもいつか、その人に会いたいと思わなくなる日が来ることが少しさびしい。
いつか、また会えるかもしれない。会えないかもしれない。それでも会いたい気持ちを、自分のなかで、ゆっくり丁寧に育てていく。そんな過ごし方があることを、若い頃は知らなかった。会えない時間は、いろいろなことを教えてくれる。
Photo by MUKAI MUNETOSHI
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会えない, 時間
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