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Essay エッセイ

夏の終わり

夏の終わり

 夏の終わりは、いつもせつない。

 それがどんなに長く、きびしく、過酷な季節だったとしても、終わったとたん、なぜかその日々が恋しくなる。剥き出しの肩にひりひりするような痛みを感じても、過ぎ去れば夢のように忘れてしまう。

 きのうと同じ暑さの中に、秋の風を感じたとき、夏の光の向こうに秋の空を見つけたとき、安堵する気持ちのなかにほんの少し、寂しさが混じる。

 照りつける陽射しを避け、熱を帯びた空気にうんざりしていたにもかかわらず、振り返ってみると、真夏の太陽から元気をもらっていたと気づく。

 思えば、恋も仕事も、夏に似ているかもしれない。

 その過程に一喜一憂し、交互に訪れる高揚と落胆を感じながら、心も体も疲れきってしまっても、終わってしばらくすると、その暮らしに戻りたくなる。刺激的で、くらくらするような毎日が懐かしくなる。

 ひとつの季節が終わって、心の底からほっとして、達成感も解放感も味わいつくしたころ、意外なほど大きな寂寥がやってくる。

 情熱の温度が高いほど、冷めたときの衝撃が大きい。密度が濃いほど喪失感が身にしみる。つらくて苦しいとわかっているのに、また同じことがしたくなる。

 はじまったときは、気が遠くなるほど長い季節に思え、誰にも終わりなど見えないのに、どんな夏にもいつかかならず終わりが来るのだ。

 生きていくということは、結局このくり返しなのかもしれない。夏の終わりは、秋と冬を同時に連れて来る。

Photo by MUKAI MUNETOSHI

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夏, 終わり

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