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Essay エッセイ

夢の話

夢の話

「きのう、こんな夢を見たんだ」と、あなたが話しはじめる。

 奇想天外な場面をつなぎ合わせた長編映画みたいな話を、わたしはうん、うん、と聞いている。

 あなたは、夢の中の自分がとても大胆で勇敢だったことがうれしくて、少し誇らしげに話す。

 わたしも、あなたの夢のなかに一緒に入りたいような気持ちになって、目を輝かせて聞く。

 きのう見た夢の話なんて、本人以外まったく面白くもなんともない話を、こんなに興味深く聞いているのは、わたしがあなたに興味があるからだ。

 あなたの何が、あなたにこんな夢を見せているのか、最近の精神状態はどうなっているのか、どんな深層心理が影響しているのか、そんなことにまで関心があるからだ。

 わたしがあなたの心の、奥の奥の底まで、知りたいと思っているからだ。

「そこで、目が覚めたんだ」と、あなたの夢の話が終わる。

 起承転結も何もない、登場人物もストーリーもめちゃくちゃの、わけのわからない展開だったけど、わたしはもっともっと聞きたくなる。

 わたしは、あなたのことが好きだから。

Photo by MUKAI MUNETOSHI

Tags:

ストーリー, 夢, 好き, 深層心理, 登場人物, 長編映画

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