top of page
梅田みか オフィシャルサイト
Essay エッセイ
恋のはじまり
もっともっと会いたくて、ずっとずっと一緒にいたい。
胸に甘い痛みを抱えて、少し踵の高い靴で街に出る。空の青も木々の緑も、ふだんは気づかない道端の花も、鮮やかな色を持つ。太陽の光も、雨の湿りも、頬を撫でる風も、すべてのものがいきいきと輝き出す。
恋のはじまりは、いつもそんな風景だ。
あなたといれば、何もいらない。ほかに望むものは何ひとつない。どこまで歩いても疲れないし、どんなものもおいしい。勉強や仕事も苦にならないし、いつまで起きていても眠くない。
むずかしい本も、わからない言葉も、退屈な映画もへっちゃら。まるで興味のなかったスポーツやゲームに、心からわくわくする。
知らない人に陰口をたたかれても気にしない。知っている人が誰もいないパーティに放り込まれたって平気。だって、わたしにはあなたがいるから。
もっともっと会いたくて、ずっとずっと一緒にいたい。その願いを叶えてくれたら、一生わがままなんて言わない。ふたりで寄り添えば、どんなことも乗り越えていける。
恋は、心を潤す極上の水をそそいでくれる。生まれてきた喜びと、生きていく力を与えてくれる。そして、ひとりで歩き出す勇気も。
いちばん好きな人と、ずっと一緒にいられないこともあるのだと知ったとき、わたしはひとつ大人になった。
Photo by MUKAI MUNETOSHI
Tags:
わがまま, ゲーム, スポーツ, パーティ, 勇気, 大人, 恋, 映画, 本, 願い, 風景
bottom of page