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Essay エッセイ
恋は鏡
恋は自分を写す鏡だ。恋をしているときほど、自分のことがよくわかるときはない。恋する相手をもっともっと知りたくてじっと目を凝らしたとき、そこに見えてくるのは自分自身だ。
恋愛中、ああ自分はこんな人間だったのかと驚くことがあるだろう。好きな人にはこんなに積極的になれるのだとか、意外と嫉妬深いのかとか、結局いちばん大事なのは自分なのだとか。恋愛は相手と向き合うだけでなく、自分自身とも向き合う貴重な機会だ。
自分を映す鏡は、小さいより大きいほうがいい。手鏡より掛け鏡、半身より全身を映す姿見。真剣で深い恋をすればするほど、自分のことがよく見える。片想いや、憧れのような幼い恋は、コンパクトの中の小さな鏡に顔を近づけて一生懸命覗き込んでいるようなもの。相手のことはもちろん、自分のこともよく見えない。
一枚の鏡より、合わせ鏡や三面鏡があればさらにいい。正面から見ただけでは気づかなかった自分の意外な一面を発見できる。横顔や後姿、様々な角度の自分をチェックできたら、今抱えている欠点や問題点も明らかになる。一度の恋ではわからなくても、何度か恋を重ねることによって、自分の癖や行動パターンがつかめてくる。
鏡は、自分が見たくないものまで映し出す。自分でも全く知らなかった願望や欲求が浮き出してくることもある。ときには拡大鏡で、自分の醜さを直視しなくてはならないときもある。そこで目を伏せたり、見なかったふりをしたりせず、しっかりと目を開いて、自分自身を見つめることが大切だ。
せっかく手に入れた鏡を割ってしまわないように、そっとこわごわ手にとる恋もある。いくつもの鏡をずらりと並べて楽しむ恋もある。たったひとつの鏡を、丁寧にずっと磨き続ける愛もある。
恋も鏡も、これぞというひとつを見つけたら、絶対に手放してはいけない。そこに映る自分が、特別に美しく、輝いて見えたらそれは、きっと運命の出会いなのだから。
Photo by MUKAI MUNETOSHI
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三面鏡, 出会い, 姿見, 嫉妬, 恋, 拡大鏡, 運命, 鏡