top of page

Essay エッセイ

死がふたりを分かつまで

死がふたりを分かつまで

「死がふたりを分かつまで」という誓いの言葉を聞くたびに、そんな愛は奇跡だと思う。命あるかぎりひとりの人を愛し、愛され、それが永遠に続いていくなんて、そうあることじゃない。

 燃えるような恋に落ちて、これが最後の恋だと信じる。ずっと一緒にいたいと切望する。けれど、時が経つと心は揺らぎ、ふたりを取り巻く気配も変わり、愛情は刻一刻と形を変えていく。

 ありとあらゆる感情がきれいさっぱり消えてしまうこともある。どうしてつきあいはじめたのか、その理由さえ思い出せないほど。どうしてあんなに好きだったのか、いくら胸に手を当ててもわからないほど、跡形もなく。

 別れの後先には、たいてい新たな恋が見え隠れする。そしてまた、今度こそ、最後の恋であってほしいと祈る。それまでの恋がすべて、そうはいかなかったことも忘れて、悲しい目をしたことのない少女のようにうなずいてしまう。

「今日はあなたのことが好きです。明日もきっと好きでしょう。もし愛がなくなっても、あなたと出会えたことを感謝するでしょう。」

 そんな誓いの言葉なら、口にすることができるかもしれない。

 死ぬまで好きでいられる人。

 死ぬまで好きでいてくれる人。

 そんな人に出会えたなら、わたしは一生大切にする。

Photo by MUKAI MUNETOSHI

Tags:

出会い, 愛, 死

bottom of page