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Essay エッセイ
衣替え
持っている服は、季節に関係なくいつも眺められるのがいい。秋風が吹いたらすぐに、夏服を全部仕舞いこむなんて、服がかわいそうな気がする。
昔から、うちでは季節の変わり目にクローゼットの衣替えをする習慣がなかった。クリーニング店から戻ってきた季節はずれの服は、オーバーコートやブレザーなどの大物だけ納戸に置いて、あとはそれぞれの部屋の押入れに一年中つるしてあった。
子供のころ、幼稚園に行く支度をしていたとき、わたしは並んだ服を見上げながらレモン色のプリーツスカートを指さして「このスカートが履きたい」と言った。すると母は「それは冬物よ。今着たらうだっちゃうわ」と笑った。きっとまだ蒸し暑い初秋に、ウールのスカートを選んだのだろう。でも、服の素材からぴったりの季節を判断するにはわたしは幼すぎて、どうして笑われているのかぴんと来なかった。わたしはただ、さわやかなレモン色のスカートを履きたかっただけなのだ。
今でも、持っている服は季節を問わず、アイテムごとに丈の短いものから順につるしてある。ハンガーにかけられないものは、薄べったい引き出しにひと目で中が見渡せるように並べておく。もう、真夏に真冬のセーターが目に入っても、季節を間違えて手に取ることもない。
それでも気に入りのワンピースなどは、何とかして一年中着ようとする。夏はサンダルで、秋は黒タイツにカーディガンを羽織って、冬はあたたかい襟つきのコートとブーツ、春は軽いジャケットとパンプスを合わせて。そんな季節をこえた着こなしのできる服は、何年も大事に着ている。
そういえば今年は着なかったなと思っても、来年はまた毎週のように着ていたり、去年は一度も手を通さなかったから手離そうかと迷っていると、また新鮮な着方をひらめいたり。そんなとき、わたしと服との関係はまたひとつ親密になる。
Photo by MUKAI MUNETOSHI
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